Mag-log in騎士登用試験の模擬戦は着々と進み、対戦表が次々と消化されていく。
そして、クレイの戦う番がまたやって来た。「次!!クレイ、ギデオン、前へ!!」立会の騎士に呼ばれた二人は対戦の場に進み出る。クレイと対峙するギデオンは、ニヤリと笑みを浮かべ……「よく怖じけずに来たな。痛い目を見る前に降参するなら今のうちだぞ?」などと挑発の言葉を放つ。だが、それを受けたクレイはあくまでも冷静に言う。「いつまでやってんだ、それ?そんな事をしなくても、俺はちゃんと本気で戦うぞ?」「……気が付いていたのか?」クレイの言葉に、意外そうな表情でギデオンは聞いた。どうやら彼は敢えて挑発を繰り返していたらしい。「そりゃあな……お前ほどの実力を持ってるなら、俺らの実力を見誤る……なんてことはないはずだ。俺が本気で戦うように仕向けようとしてたんだろ?」「何だ、最初から全てお見通しだったのか……」(いや、エステルの評価を聞いたのと、さっきの戦いぶりを見たから気が付いたんだが……まぁ、それは黙って騎士登用試験の模擬戦は着々と進み、対戦表が次々と消化されていく。そして、クレイの戦う番がまたやって来た。「次!!クレイ、ギデオン、前へ!!」立会の騎士に呼ばれた二人は対戦の場に進み出る。クレイと対峙するギデオンは、ニヤリと笑みを浮かべ……「よく怖じけずに来たな。痛い目を見る前に降参するなら今のうちだぞ?」などと挑発の言葉を放つ。だが、それを受けたクレイはあくまでも冷静に言う。「いつまでやってんだ、それ?そんな事をしなくても、俺はちゃんと本気で戦うぞ?」「……気が付いていたのか?」クレイの言葉に、意外そうな表情でギデオンは聞いた。どうやら彼は敢えて挑発を繰り返していたらしい。「そりゃあな……お前ほどの実力を持ってるなら、俺らの実力を見誤る……なんてことはないはずだ。俺が本気で戦うように仕向けようとしてたんだろ?」「何だ、最初から全てお見通しだったのか……」(いや、エステルの評価を聞いたのと、さっきの戦いぶりを見たから気が付いたんだが……まぁ、それは黙っておこう)彼もまだ少年なので良い格好がしたい年頃なのだ。「だったら話は早え。最初から全力で行かせてもらうぜ!!」「あぁ……来い!!」「……よし、準備は良いようだな」二人の話が終わるのを待っていてくれたらしい立会の騎士が双方に確認する。もしかしたら、この場での立ち居振る舞いも見ていたのかもしれない。「それでは、始め!!」クレイvsギデオンその戦いの火蓋が落とされた! ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆先ず初めに動いたのはギデオンだ。大剣を大きく振りかぶりながら、先の戦いと同じように一瞬で間合いを詰める!!しかし、それはスピードもパワーもさきほどとは比べ物にならない程の一撃だ!!「はぁーーーっっっ!!!」(やっぱりさっきは本気じゃなかったか。そうこなくちゃな)刹那の間にもクレイは冷静に大剣の軌道を見極める。そして……!!ガァンッッ!!!木剣とは思えないような凄まじい衝突音
騎士登用試験の会場では最後の試験である模擬戦が行われていた。試験に集ったのは当然何れも腕に自身のある若者たちばかり。自らの力で栄光を掴むため、持てる力を惜しみなく発揮して熱い戦いが繰り広げられている。裂帛の気合の声と剣を打ち鳴らす音が幾度となく響き渡り、試験官の宣言が無情にも勝者と敗者を分かつ。そんな中にあって、クレイは模擬戦の様子を視界に入れながらも気もそぞろに別の事を考えていた。(エステル……別の会場で試験を受けてるだと?考えられるのは師匠の娘って事が分かって……特別待遇って事か?)かつて名を馳せた剣聖の娘。クレイからすれば理由はそれくらいしか思い浮かばなかった。まさか今頃……貴族令嬢と力を合わせて料理を作ってそれを堪能しているなど、想像できるはずもないだろう。(……まぁいい。ちゃんと試験を受けてるってんならそれで。わざわざ特別待遇にするくらいだし、あいつの実力なら合格は間違いないだろう。これ以上心配しても無駄だ。とにかく、今は自分が合格することだけを考えよう)クレイはそう気持ちを切り替えて、初めて目の前の模擬戦に集中し始める。模擬戦は一回きりではなく、何度か対戦が組まれている。そして審査としては、勝利する事が重要である事に違いはないが、敗けたからといって直ちに不合格となるわけではないらしい。試合の内容もある程度見られるとのことだった。クレイ自身も既に一度対戦を行い、集中力に欠きながらも全く危なげなく勝利を収めていた。(……こんなものか。油断するつもりはないが、これなら…………ん?アイツは確か)暫く模擬戦の様子を見ていたクレイは、自分の脅威となりそうな相手は多くなさそうと感じていたが、ある男が試合に現れるとそれに注目する。その男は筋骨隆々の大男……試験開始前にクレイとエステルに絡んできた男だった。(さて……エステルの評価は『そこそこ』と言う事だったが、どんなものかな)エステル評の『そこそこ』は、一般的には相当な強者となる。シモン村の自警団メンバーの多くがこれに当たるのだ。因みにエステルの評価ランクは下から順にこんな感じだ。『よく分かんない』『あんまり強くない』『まあまあ』『そこそこ』
エステル達が後宮の厨房にて料理を作っている頃、国王の執務室にて……「陛下、どういう事なのですか?」今日も今日とて書類仕事に忙殺される国王のもとに、これもいつもの事である宰相閣下の苦言が飛び出していた。ただ、彼が少し怒っている口調なのは中々無い事ではあった。「どういう事……とは、どういう事だ?」「とぼけないで下さい。後宮審査会のことですよ」「ああ……あれか。何やら|手違い《・・・》があったようだな。残念な事に」宰相フレイの追求に、大袈裟にため息をつきながら態とらしく嘆いて見せる国王。しかしフレイは目を細めて尚も言い募る。「よくもまあ抜け抜けと……どうするおつもりなのです?まさか……平民の娘を後宮に迎えるなどと仰るつもりではないでしょうね?」「……何が問題ある?平民だから何だと言うのだ?」それまではフレイの言葉にのらりくらりと返していた国王は、『平民の娘を〜』という言葉を聞いて明らかに怒りの感情を見せる。「……失言でした。ですが、実際どうするおつもりなのです?あの娘……エステルは騎士志望だったはず。本人の意志を無視してこんな強引な方法を取るなど……陛下らしくもない」フレイは失言を認めて詫びるが、引き下がるつもりは無いようだ。そして彼の言う事は全くの正論である。「俺らしくない、か……それはどうかな?立場を笠に着て強権を振るう……元々そんな男だったのかもしれんぞ?」 彼は自嘲気味にそんな事を言った。フレイはそれを聞いて、少しトーンを落として言う。「陛下がそのような方ではないのは、我々臣下は良く分かっております。ですから、尚更今回の件が不可解なのですよ」その声は心配の色を含んでいた。それを聞いて流石にバツが悪くなったらしい王は、真面目な顔になってその真意を明かした。「できれば、彼女を妃として迎えたいと考えてる。側室や愛妾ではなく」「……!まさか、本気……なのですか?」「ああ、本気だ」あくまでも真面目に王は答える。フレイは今回の件は単なる王の戯れで、まさか本気だとは思ってなかった。「妃の事を考えて頂けたのは大変喜ばしい事ではありますが……なぜ彼女なのです?
様々な食材を確認しながらカテナのアドバイスを受けてエステルたちが作ることにした料理。それは……「ズバリ、シチューを作りましょう!!」と言う事である。シチュー……要するに煮込み料理であるが、今回作るのはホワイトシチューだ。これに決めた理由としては、比較的シンプルで特別難しい技術も必要ない……と言うのが大きいだろう。平民にも貴族にも馴染みのある料理であるし、エステルも大好きな料理である。「切って、煮込んで、味付けする……楽勝ね!!」「確かにそれほど難しくはない料理ですが……注意すべきポイントは幾つか御座いますよ」ミレイユが意気込みを見せるが、アドバイザーのカテナはやんわりと注意する。「では早速始めましょうか……先ずは野菜を切るところからですね……包丁を握るのは初めてです」「私も……大丈夫かしら……」「私は、切るのは得意です!!」エステルは一人で料理を作ることは出来ないが、食材を切るのは得意である。いや、得意ではあるのだが……「まあ、エステルさんは普段お料理をされるのですか?」「あ、普段からお母さんの手伝いをしてるだけです。見ててくださいね!!」そう言って彼女は……何と、空中に野菜を放り投げたではないか!それも一つではなく、幾つもの同時にだ。そして包丁を構えたエステルは、目にも止まらぬ速さでそれを振るった!!落ちてきた野菜に無数の斬撃が刻まれ……包丁とは逆の手に持っていたボウルの中に、全ての野菜が落ちていく。「はい、こんな感じでどうですか?」エステルが差し出したボウルの中を見ると、綺麗に皮が剥かれ、均等にブロック状に切り刻まれた野菜が。「「「…………」」」レジーナとミレイユ、カテナの3人はまたもや唖然として声が出ない。剣聖の娘エステル、こんなところで本領発揮である。「え〜と……私のイメージする料理とは、ちょっと違う気がするんですけど」何とか言葉を捻り出すレジーナ。ミレイユはまだ立ち直っていない。「ふ、普通でないのは確かです……ただ、ちゃんと綺麗に切れてますね。もう少し分量が必要かと思いますので、お二人もこれくらいの大きさで切って見
何人かのグループに分かれての料理対決と言う事だが……これまで料理をしたことが無いであろう高位貴族のご令嬢たちが作る料理は、果たしてどんなものになるのか想像もつかない。プロの料理人がアドバイスしてくれるとは言え、何を作るのかを決めて、実際に調理を行うのは彼女たちだ。先程まで文句を言っていた令嬢たちも、今は不安そうな表情だが……どこか興味深そうにしている様にも見える。そして各グループにサポートのための料理人が付くが、やはり全員が女性だった。エステルたちのグループにも若い女性の料理人がやって来て挨拶をしてくれる。茶褐色の髪をショートヘアーにして白いコック帽を被り、同じく白のコックコートを着たいかにも料理人と言った清潔感のある雰囲気だ。「今回、皆様方のサポートをさせていただきます、王城付き料理人のカテナと申します。直接手を出すことは出来ませんが、分からないことがありましたら遠慮なくご質問ください」「よろしくお願いいたします」「頼りにしているわ」「エステルです!よろしくお願いします!」カテナの自己紹介を受けて、レジーナ、ミレイユ、エステルもそれぞれ挨拶を返す。「さあ、早速ですが……あちらに食材や調味料をご用意しておりますので、ご覧になって作りたい料理をイメージして頂ければ……と思います」カテナが示した場所にはかなり大きめの調理台が置かれ、その上には肉や野菜などの食材が山となって置かれている。『この世の食材は全てここに!!』……というのは大げさだが、実に様々な種類のものがあり、あらゆる料理に対応出来るであろう。令嬢たちも興味津々で近付いて、サポートの料理人にあれこれ質問をしている。文句を言っていた令嬢たちもすっかり夢中になって確認していた。「こんなに沢山の食材を見る機会はなかなかありませんわよね……これは何でしょうか?」「そちらは白芋ですね。生では食べられませんが、煮たり蒸かしたりするとホクホクとした食感となります」「これは何かしら?」「橙長根ですね。生でも食べられますが、少し苦味があります。火を通すと甘みが出て食べやすくなります。白芋も橙長根も、様々な料理に使われる基本的な食材の一つです」丸のままの野菜など目にし
後宮審査会第二の課題。その実施場所として案内されたのは後宮の厨房だった。果たして、ここで行われる課題とはいったい何なのか?戸惑う令嬢たちをよそに、ドリスは説明を始めた。「皆様方には何名かのグループになっていただき……お料理を一品作って頂きます」戸惑いの空気がどよめきに変わる。それも無理からぬ事だろう。彼女たちはみな貴族……それも名家の出だ(1名除く)。毎日の料理は専属の料理人が作るのが常であり、自らの厨房に立つことは無いのである。「私達に使用人の真似事をさせるというの!!馬鹿にしているわ!!」その時、怒りをあらわにした令嬢の一人がドリスに食ってかかった。他にも何人か彼女に同調して詰め寄る。「馬鹿になどしてはおりません。これはれっきとした審査なのです。ご了承頂けないようでしたら、残念ですがこれ以上はお引取り頂くことになります」怒れる貴族令嬢たちに詰め寄られても、萎縮することなくドリスは淡々と言う。使用人の立場では貴族に強く出られれば、そうそう抗うことなど出来そうもないが……彼女は中々の胆力を持っているようだ。「くっ…………だけど、私……料理なんてした事ないわ!!」「私もよ!!」「こんな審査……意味がないわよ!!」審査終了をチラつかされて幾分かトーンは落ちたものの、尚も言い寄る令嬢たち。その様子を見て、ため息をつきながら小さな声で呟く者が。「ふぅ…………彼女たちは、この試験の意図が分かって無いようね……」「え?レジーナ様はお分かりに……?」呟いたのはレジーナ、それを聞いて問うたのはミレイユ。二人は王都の社交界で面識があり友人と言っても良い間柄だ。「推測ではありますけど。後宮に住まうのが、どういう者なのか……それを考えれば自ずと答えはでます」「えっとえっと……みんなで力を合わせて頑張ろう!!って事ですよね!!」二人が話しているところに、エステルも加わった。エステル的にはミレイユはもう友達だから。「あ、あなた……人の話に勝手に入って……」「あなたはエステルさんでしたわね。先程のダンスはとても見事でした」ミレイユは突然話に入ってきたエステルに文句を言おうとするが、







